地震でもないのに道路が突然大きく陥没し、走行中のトラックが転落するという衝撃的な事故が起きた。
地下で何が起きていたのか。原因究明と再発防止が急務だ。
これも一種の災害と言える。老朽化が原因とはいえ、最近ニュースでよく耳にする話である。
道路が陥没したのは、埼玉県八潮市の県道交差点で、直径10メートル、深さ10メートルにわたって大きな穴が開いた。トラックはたまたま現場を通りかかった際、直前に開いたその穴に落下し、男性運転手が車内に取り残された。
警察と消防が救助活動を続けているが、穴には土砂や水が流れ込み、作業は難航している。救出を急いでほしい。近くでは新たな陥没も発生し、地中のガス管が破損する恐れがあるとして、市などが周辺住民に避難を勧告した。
現場は市の中心部で、近くには市役所や学校もある。多くの車や人が行き交う場所で、突如として道路がこれほどの規模で陥没しようとは、誰も想像できなかっただろう。近隣の人からすれば他人事ではない気がすると思う。
この下水道管は1983年に使用が開始され、2021年度の定期点検では「ただちに工事は必要ない」と判断された。ただ、20年度の調査では500メートル離れた地点の下水道管は腐食が進んでいることが確認され、修繕が必要な状況だったという。
下水道管の破損による道路の陥没は全国で発生している。国の調査では22年度だけで2000件以上起きた。老朽化した管に土砂が流れ込んで地盤が沈み込むケースが多いという。今回の事故も同じ理由だったのか。国内の水道管は各地で老朽化が進んでいるが、自治体の財政難で交換が追いつかない状況だ。このままでは道路の陥没に歯止めがかからない。自治体は更新作業を急がなければならない。
水道管の点検は、最近はAI(人工知能)を使って劣化度を調査する方法もある。調査の精度を高め、効率的な水道管の更新につなげたいもの。さらに、JR博多駅前や東京都調布市では過去、地下の工事が原因で大規模な陥没が起きた。安心して暮らすためには、地中に潜む様々なリスクを取り除くことが重要だ。

道路が陥没するメカニズム
管路の劣化や破損。この場合、どのようにして道路陥没は起こるのか。そのメカニズムはこのようになっていると考えられている。

例えば、夏の大雨で、もともと老朽化していた埋設管に大量の土砂が流れ込めば、それだけ陥没も発生しやすくなるという。
国土交通省の資料によると、2022年度末における全国の下水道管路の総延長は約49万km。
そのうち、標準耐用年数である50年を経過した管路は総延長の約7%(約3万km)にもおよぶとされる。さらに10年後には約19%(約9万km)、20年後には約40%(約20万km)に急増するとしている。
道路陥没を防ぐには「水インフラ」の維持・更新は必要不可欠だ。道路管理と合わせて、適切に管路が管理されることを願いたい。
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