――地震・豪雨・津波・噴火の裏で拡散する「命を脅かすウソ」と、正しい判断力の身につけ方――
はじめに|災害時、いちばん危険なのは「デマ」かもしれない
災害が発生した瞬間、私たちの生活は一変します。突然の揺れ、鳴りやまない警報、止まる交通、断たれる通信。こうした混乱の中で、人はどうしても「不安」や「恐怖」に支配されやすくなります。そして、その不安の隙間に入り込んでくるのが「災害デマ」です。
災害デマとは、災害に関連して拡散される事実ではない情報、誤解を招く情報、悪意あるうわさのことを指します。問題なのは、これらが単なる噂話にとどまらず、人の命や行動を直接左右してしまう点です。「危険だから逃げろ」「ここは安全だ」「物資が足りなくなる」「〇〇が起きる前兆だ」――。こうした言葉に振り回された結果、本来取るべき避難行動が遅れたり、不要な混乱が起きたり、最悪の場合、命を落とすことさえあります。
現代ではSNSやメッセージアプリが普及し、善意のつもりで共有された情報が、一瞬で全国・全世界に広がります。しかし、その情報が正しいかどうかを確認する前に拡散されてしまうことが、災害デマをより深刻な問題にしています。
本記事では、「実際にどんな災害デマが存在するのか」「なぜ人はだまされてしまうのか」「どうすれば見抜けるのか」を、具体例を交えながら徹底的に解説します。
目的はただ一つ。あなたと、あなたの大切な人の命を守るための“正しい判断力”を身につけてもらうことです。
「念のため、回しておきます」
「本当かどうか分からないけど、気をつけて」
災害が起きたとき、あなたも一度はこんな言葉を目にしたことがあるのではないでしょうか。
地震、豪雨、津波、噴火。
不安が一気に広がるその瞬間、人は理性よりも感情で情報を選びます。
そして現代では、その感情に火をつける装置が――SNSです。
災害デマの恐ろしさは、「だます側が悪人とは限らない」ことにあります。
多くは、
- 家族を守りたい
- 友人に知らせたい
- 誰かの役に立ちたい
という善意から始まります。
しかし、その善意が
- 避難を遅らせ
- 無駄な移動を生み
- 混乱を拡大させ
- 時に命を奪う
という現実を、何度も見てきました。
この記事では、
✔ 実際に広まった災害デマ
✔ なぜ信じてしまうのか
✔ 信じた結果、何が起きたのか
✔ どう見抜けばいいのか
を、章ごとに全く違う切り口で解説します。
目的は一つ。
「あなたが次の災害で、間違えないための地図」を手渡すことです。
第1章|地震デマの実例と危険性
地震は、日本に住む私たちにとって最も身近で、最も恐ろしい自然災害のひとつです。突然起こり、予測が難しく、建物やライフラインに甚大な被害をもたらします。その不確実性ゆえに、地震に関する情報は常に人々の関心を集め、同時にデマが生まれやすい土壌を持っています。
特に大きな地震が発生した直後や、余震が続いている状況では、「次はもっと大きい地震が来る」「この場所は危険だ」「〇時に必ず本震が来る」といった情報が拡散されがちです。こうした情報は、一見もっともらしく聞こえるため、多くの人が信じてしまいます。しかし、地震の発生時刻や規模をピンポイントで予測することは、現在の科学では不可能です。
地震デマの怖さは、「信じた結果、誤った行動を取ってしまう」ことにあります。必要のない場所から避難して危険にさらされたり、逆に安全な場所にとどまるべきなのに移動してしまったりするケースも少なくありません。地震という極限状態では、人は冷静な判断を失いやすく、その弱点を突くようにデマは拡散されていくのです。
たとえば、
夜10時過ぎ。
スマホに届いた1通のメッセージ。
「知り合いの知り合いが防災関係者で、
今夜2時に“本震”が来るらしい。
絶対に家から出た方がいい」
送り主は、普段から真面目な友人。
デマを流すような人ではありません。
「本当かな…」
「でも、もし本当だったら…」
その夜、眠れずに荷物をまとめ、
真夜中に家族を起こして車で移動した人が、実際にいます。
結果――
何も起きませんでした。
しかし別の場所では、
- 深夜の移動中に交通事故
- 寒さで体調悪化
- 高齢者が転倒
という“デマ由来の被害”が起きていました。
▶ 実際に流れる地震デマ(典型例)
- 「◯月◯日◯時に必ず来る」
- 「これは前震で、このあと本震」
- 「専門家が警告している(名前なし)」
- 「政府は隠している」
▶ なぜ信じてしまうのか?
✔ 時刻が具体的
✔ “関係者”という言葉
✔ 恐怖と不安のピーク
人間はこの3点がそろうと、思考停止します。
▶ 正しい道しるべ(ここが重要)
❌ 地震は「日時指定」で予測できない
⭕ 信じていいのは
- 気象庁
- 自治体
- NHKなどの一次情報
📌 「誰が言ったか分からない情報」は即アウト

第2章|豪雨・洪水デマが引き起こす二次災害
近年、日本では線状降水帯による豪雨や河川氾濫が頻発しています。豪雨災害は進行が早く、判断の遅れが命に直結するため、正確な情報が何よりも重要です。しかし、その一方で、豪雨時には誤情報やデマが爆発的に増えるという問題があります。
「この川はまだ大丈夫」「ダムは決壊しない」「避難所が閉鎖された」など、根拠のない情報が広がることで、避難のタイミングを誤る人が出てしまいます。特に危険なのは、「安心させるタイプのデマ」です。人は不安なときほど「大丈夫」という言葉を信じたくなり、その結果、逃げ遅れてしまうことがあります。
たとえば、
「避難した?」
「いや、SNSで“まだ大丈夫”って回ってたよ」
「そうなんだ…じゃあ様子見でいいか」
――この会話、実際の豪雨災害で何度も繰り返されました。
豪雨・洪水のデマは、
“安心させるタイプ”が多いのが特徴です。
▶ よくある豪雨デマ
- 「この堤防は決壊しない」
- 「ダムがあるから安全」
- 「避難所はもう閉まっている」
- 「避難すると空き巣に入られる」
特に最後の「空き巣デマ」は非常に多く、
避難をためらわせる最悪のデマです。
▶ なぜ豪雨デマは危険か?
豪雨災害は
- 夜に起きやすい
- 進行が早い
- 取り返しがつかない
つまり、「迷った時点で遅い」のです。
▶ 正しい道しるべ
✔ ハザードマップは平常時に確認
✔ 「大丈夫」という情報ほど疑う
✔ 避難情報は自治体公式のみ
📌 「逃げすぎて困る」ことはないが、「逃げ遅れ」は命取り
第3章|津波デマが命を奪う理由
津波は、地震とセットで語られることが多い災害です。津波の恐ろしさは、一度逃げ遅れると取り返しがつかない点にあります。そのため、「津波は来ない」「ここまでは来ない」というデマは、極めて危険です。
過去の災害では、「前回は大丈夫だったから今回も大丈夫」という思い込みが、多くの犠牲を生みました。津波は地形や地震の規模によって大きく変化し、過去の経験が通用しないケースも多々あります。
あなたは、次の言葉に心当たりはありませんか?
☑ 前回は大丈夫だった
☑ この高さなら来ない
☑ 第一波が小さかった
☑ みんな逃げていない
――1つでも当てはまったら、危険信号です。
▶ 津波デマの典型
- 「ここまでは来ない」
- 「防波堤があるから安全」
- 「第一波が小さい=もう終わり」
- 「様子を見てからでいい」
▶ なぜ津波は“判断ミス即アウト”なのか
津波は
- 何度も来る
- 高さが後から増す
- 引き波が命取り
過去の経験がまったく役に立たない災害です。
▶ 正しい道しるべ(最重要)
📌 揺れたら、考える前に逃げる
📌 高台へ、遠くへ、すぐに
📌 「大丈夫そう」は一番危ない
第4章|噴火・火山デマと誤った安心感
火山大国・日本では、噴火に関する誤情報も後を絶ちません。「噴火は予兆がないと起きない」「今回は小規模だから安全」といった情報は、多くの場合誤りです。火山活動は非常に複雑で、専門家でも慎重な判断が求められます。
「今日も観光客、多いね」
「ニュースで噴火って言ってたけど、普通に来てるし大丈夫でしょ」
火山に関するデマは、恐怖よりも“油断”を誘う形で広がります。
なぜなら、火山は多くの場合「日常の中」に存在しているからです。
・昨日も噴火していた
・今日も煙が出ている
・でも普通に生活できている
この「慣れ」が、判断を鈍らせます。
▶ 実際に多い火山デマ(噴火編)
- 「煙が少ないから今回は安全」
- 「小規模噴火だから心配ない」
- 「観光客が入れている=問題なし」
- 「地元の人が普通に暮らしているから大丈夫」
一見、もっともらしい。
しかし、これらはすべて危険な思い込みです。
▶ なぜ火山デマは見抜きにくいのか?
✔ 噴火=すぐ大惨事、ではない
✔ 危険が“じわじわ”進行する
✔ 専門用語が多く、理解しにくい
結果として、人は
「自分の感覚」で安全を判断してしまうのです。
▶ 決定的に間違っているポイント
❌ 観光情報 ≠ 安全情報
❌ 生活できている ≠ 危険がない
火山の安全判断は、
個人の感覚では絶対にできません。
▶ 正しい道しるべ(火山編)
📌 火山警戒レベルを最優先で確認
📌 自治体・気象庁の発表のみを信じる
📌 規制区域には絶対に入らない
💡「入れる」ではなく
💡「入っていい理由があるか?」を見る

第5章|SNS時代に増殖する“善意のデマ”
現代の災害デマで最も厄介なのは、「悪意ではなく善意から拡散されるデマ」です。「誰かの役に立ちたい」「早く知らせたい」という気持ちが、結果的に誤情報を広げてしまいます。
たとえば、
【拡散希望】
友人の知人が被災地にいます。
水が足りていないそうです。
とにかく回してください。
この投稿、悪意はゼロです。
むしろ「優しさ」から生まれています。
しかし――
・いつの情報か分からない
・どこの話か分からない
・本当に今も必要か分からない
それでも、
「回さないと冷たい人みたい」
という空気が、拡散を後押しします。
▶ SNS災害デマの代表例
- 数年前の被災写真の再投稿
- 他地域の情報を現在の災害と誤認
- 「友人の知人」ルート
- 情報源が書かれていない警告文
▶ なぜ“善意デマ”が一番厄介か
✔ 否定しづらい
✔ 感情に訴える
✔ 疑う人が悪者になる
その結果、
間違った情報ほど広がるという逆転現象が起きます。
▶ デマかどうかを見抜く3点チェック
📍 ① いつの情報?(日時)
📍 ② どこの話?(場所)
📍 ③ 誰が言っている?(発信元)
この3つが欠けていたら、
拡散しない勇気を持ってください。
▶ 正しい道しるべ(SNS編)
⭕ 「分からない」は共有しない
⭕ 公的機関の情報を優先
⭕ 善意でも、確認が先
📌 助けたいなら、正確であることが最優先
おわりに|だまされないことは、命を守ること――「情報の防災力」は、今すぐ身につけられる
災害デマにだまされないということは、単なる知識の問題ではありません。それは、あなた自身と、周囲の人の命を守る行動です。
不安なときほど、立ち止まり、確認し、信頼できる情報を選び取る――その冷静さが、災害時には何よりの防災になります。
「正しい情報を信じる力」こそが、これからの時代の最大の防災対策です。
災害時、
一番早く広がるのは「情報」です。
そして一番人を傷つけるのも、時に「情報」です。
・正しい情報は、行動を助ける
・間違った情報は、行動を狂わせる
だからこそ、
だまされないこと=防災なのです。
今日からできることは、難しくありません。
✔ 情報をすぐ信じない
✔ 出どころを見る
✔ 公的発表を待つ
✔ 不確かな情報は回さない
それだけで、
あなたは「災害に強い人」になります。
そして何より――
あなたが冷静でいることが、家族を守ります。
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