はじめに
「次の大地震はいつ、どこで起きるのか?」——日本に暮らしていると、一度は考えたことがあるテーマだと思います。SNSやテレビでは「○月○日に大地震が来る」「この前兆が出たから危ない」といった情報も流れてきて、不安になる人も多いでしょう。
しかし、アメリカ地質調査所(USGS)や日本の気象庁など、世界中の公式機関は共通して「日時・場所・規模までピタリと言い当てる地震予知は、いまの科学ではできない」と明言しています。参考:USGS
それでも一方で、「30年以内に南海トラフ沿いでマグニチュード8〜9級の巨大地震が起きる確率は○%」といった“地震の確率予測”や、揺れが届く数秒〜数十秒前にスマホへ警報を出す「緊急地震速報」など、地震に関する“予想”や“警告”はすでに私たちの生活の一部になっています。参考:The Japan Times
では、いったい地震予知はどこまで現実的に進んでいるのでしょうか?「昔は“地震を予知できる時代が来る”と言われていたけれど、結局どうなったの?」と疑問に思っている方も多いはずです。特に東日本大震災や熊本地震、大阪北部地震など、ここ10数年の大きな揺れを経験した世代にとって、地震は決して“他人事”ではありません。
本記事では、
を、できるだけ専門用語を使わず、やさしい言葉で整理していきます。
難しい数式や専門用語は出てきません。「なんとなく地震が怖い」「でも、何を信じて、どう備えればいいのか分からない」という方にこそ読んでいただきたい内容です。なおこの記事は、防災ブログの一記事として、「日常の延長線上にある備え」をテーマに書いています。専門家だけでなく、子どもから高齢者まで、家族みんなで一緒に読んでもらえるような“地震予知入門編”として、肩の力を抜いて読み進めていただければうれしいです。
第1章 「地震予知」と「地震予測」はちがうもの
まず最初に、よく混同されがちな2つの言葉を整理しておきましょう。それが、
- 地震予知(ピンポイント予言型)
- 地震予測(確率・統計型)
です。
1−1 「地震予知」は“いつ・どこで・どれくらい”を当てること
一般的に「地震予知」というと、
- いつ(日時)
- どこで(場所)
- どれくらいの規模(マグニチュードや震度)
といった3つを、事前にかなり具体的に言い当てることを指します。
たとえば、
「○年○月○日に、東海地方でマグニチュード8クラスの地震が発生する」
といったレベルのものです。もしこれが本当にできれば、前もって大規模避難や建物の補強ができ、被害を劇的に減らせるはずです。だからこそ、世界中の研究者が「地震予知」を“地震学の聖杯”として追い求めてきました。
しかしUSGSは公式のQ&Aで、「世界中のどの研究機関も、大地震を日時・場所・規模まで正確に予知したことは一度もない。今後しばらくの間も、それが可能になる見通しはない」と明言しています。
日本の気象庁や地震本部も同じスタンスで、「短期的な地震予知は現状では実現していない」と説明しています。
24時間テレビやSNSなどで「○日○時に大地震が来る」といった“予言”が話題になることがありますが、こうしたものは科学的根拠が認められておらず、公式機関は相手にしていません。「たまたま当たったように見える予言」が話題になる一方で、外れた予言の方が圧倒的に多いという事実は、あまり語られません。
1−2 一方で進んでいる「地震予測」
一方、「地震予測」はもう少し違う考え方をします。これは、
- ある地域で
- ある期間のあいだに
- ある規模以上の地震が起きる“確率”を示す
という、統計的・長期的なものです。
たとえば日本政府の地震調査研究推進本部は、
「今後30年以内に南海トラフ沿いでマグニチュード8〜9級の巨大地震が発生する確率は、70〜80%程度」
といった数字を公表しています。これは過去の地震の間隔や、プレート(岩盤)の動きをGPSで観測した結果などを組み合わせて、「このくらいの確率で起きそうだ」と計算しているのです。
ここで重要なのは、
- 「いつ起きるか」はわからない(明日かもしれないし、30年ギリギリかもしれない)
- 「どの地域がどれくらい揺れるか」を地図として示すことはできる
という点です。
つまり、
- ピンポイントな「地震予知」はできない
- でも「どのあたりが、どれくらい危ないか」を長期的に評価する「地震予測」は、かなり進んでいる
というのが、現代の地震科学の立ち位置なのです。
海外でも、チリやアメリカ西海岸、トルコなど、プレート境界に沿った地域では同じように「今後数十年のうちに大地震が起きる可能性が高い」と評価されており、その結果として
- 耐震基準の強化
- 津波避難施設の整備
- 大規模な防災訓練
などが進められています。つまり、世界各国とも「予知」ではなく「長期的な確率評価」を土台に対策を考えているのです。
1−3 早期警報(緊急地震速報)は「予知」ではなく「超高速の通知」
もうひとつ、よく誤解されるのが「緊急地震速報」です。スマホやテレビで「強い揺れに警戒してください」と鳴る、あのアラームですね。
これは地震が起きる“前”に知らせてくれるので、「予知している」と思われがちですが、実際には
- すでにどこかで地震が起きたあとに
- 一番最初に届く小さな揺れ(P波)をキャッチして
- その情報をもとに強い揺れ(S波)が来る前に警報を出す
という「超高速の観測・通知システム」です。参考:Google Scholar
たとえるなら、
「すでに雷が落ちた場所の光を見て、少し遅れてやってくる雷鳴を予告する」
ようなもの。まったくの“事前予知”ではありません。
それでも、震源からある程度離れた地域では
- 数秒〜十数秒の「猶予時間」
が生まれます。このわずかな時間でも、
- 火を消す
- 机の下に入る
- エレベーターの階を指定して一旦止める
といった対策を取ることができ、「被害軽減」という点では非常に大きな意味があります。
私たちの側も、
- スマホの緊急地震速報をオフにしない
- アラーム音を聞いたら「まず身を守る」という動作を体に覚えさせておく
など、シンプルだけど大事な準備をしておきたいところです。
第2章 いま、科学はどこまで地震を“読み取れている”のか
では、具体的に地震研究はどこまで進んでいるのでしょうか。ここでは、
- 長期的な確率予測
- 地震発生のメカニズム解明
- AIやビッグデータを使った新しい取り組み
といった3つの側面から見てみましょう。
2−1 長期予測:地震ハザードマップと「30年確率」
日本では、地震本部が中心となって「全国地震動予測地図(地震ハザードマップ)」を作成しています。これは、
- 今後30年のあいだに
- 震度6弱以上の揺れに見舞われる確率
を、場所ごとに色分けして示した地図です。参考:The Japan Times
この地図では、
- 南海トラフ沿いの太平洋側
- 首都圏周辺
- 日本海側の一部地域
などで高い確率が示されており、「どの地域が相対的に危険か」をざっくりと見ることができます。自治体が配布している「わが街のハザードマップ」にも、こうした情報が組み込まれています。
ただしこれはあくまで
- 過去の地震の履歴
- プレート境界の性質
- 活断層の位置
などをもとにした「長期的な傾向」であって、「来月○日にここで揺れる」といった短期予知ではありません。
それでも、このような情報があるからこそ、
- 自治体はハザードマップや避難計画を作れる
- 私たちも「家を建てる場所」「仕事や学校の通い方」を考える材料にできる
- 企業は工場や物流拠点をどこに置くか、リスクを踏まえて検討できる
という意味で、長期予測はすでに社会の重要な基盤になっています。
2−2 地震の“前ぶれ”は本当にないのか?
「大きな地震の前には、必ず前兆があるはずだ」と考えたくなるのが人情です。たとえば、
- 動物が騒ぐ
- 空が不思議な色になる
- 電波に乱れが生じる
- 小さな地震が続く
といった話は、昔から世界中で語られてきました。
実際、学術的にも
- 小さな前震が増えるケース
- 地下水の成分や水位が変化するケース
- 地殻変動がゆっくり進むケース(スロースリップ)
など、さまざまな「かもしれない前兆」が報告されています。
しかし大きな問題は、
- 前兆らしき変化があっても、大地震につながらないことが多い
- 逆に、大地震の前にハッキリした前兆が見つからない場合も多い
という点です。
つまり、
- 「前兆があった=必ず大地震が来る」
- 「前兆がない=当分は安心」
とは言えないのです。
世界的な議論の中でも、
「個々の“前ぶれ現象”は興味深いが、それを使って日時・場所・規模まで当てることは現時点では不可能」
という結論が主流になっています。参考:USGS
以前、中国や旧ソ連などで「地震予知に成功した」とされる事例もありましたが、後から冷静に検証すると、
- 前兆が偶然、大地震の前に重なった
- 範囲や期間が広すぎて、本当に“予知”と言えるのか疑問
など、課題が多いことが分かってきました。
2−3 AIとビッグデータによる新しい地震研究
近年注目されているのが、
- 機械学習(AI)
- ディープラーニング
- 大量の観測データの解析
を組み合わせた、新しいタイプの地震研究です。
世界中には何万もの地震計が設置されており、毎日のように小さな揺れが記録されています。これらをすべて人間の手で解析するのはほぼ不可能ですが、AIを使うことで、
- 微弱な揺れからも地震を見つける
- 過去のパターンから将来の“揺れやすさ”を評価する
- プレート境界のどの部分で歪みがたまりつつあるかを推定する
といった試みが進められています。
たとえば最近の研究では、
- 南カリフォルニア地域におけるマグニチュード6以上の地震の発生確率を、従来よりも精度よく評価しようとする試み
- GPSや衛星データからプレートの動きを高精度に測り、「どのエリアが将来的に大きく滑りそうか」を推定する研究
などが行われています。
ただし、これらもあくまで
- 「どの地域が、どのくらいの確率で危ないか」を改善する
ことが主な目的であって、
- 「いつ、どこで、何時何分に起きる」といった短期予知を実現するものではありません。
AIは“魔法の箱”ではなく、あくまで「データをより賢く読むための道具」にすぎない、という冷静な見方が地震学者の間では一般的です。「AIが地震を完全予知!」という見出しを見かけたら、まず疑ってかかるくらいがちょうどいいかもしれません。
2−4 これまでの「地震予知プロジェクト」から分かったこと
実は、地震予知をめざす大規模プロジェクトは、過去にも世界各地で行われてきました。代表的なのが、
- アメリカ・カリフォルニア州のパークフィールド実験
- 中国・海城地震の予知とされる事例
などです。
パークフィールド実験では、「この地域ではマグニチュード6クラスの地震が約22年周期で起きている。ならば次の地震は○年ごろだろう」と予測し、世界中から最新の地震計や観測機器を集めて待ち構えました。しかし、ふたを開けてみると、予測された時期を大きく外れて地震が発生。「周期性だけに頼った予知の難しさ」が浮き彫りになりました。
中国の海城地震についても、「家畜の異常行動や小さな地震の増加から、住民避難に成功した」という成功例として語られてきましたが、その後の研究では、
- 前兆があったにもかかわらず、予知できなかった地震も多い
- 成功例だけを強調すると、全体像を見誤る
といった指摘がなされています。
こうした経験から、現在の地震学では、
「短期的な“当たり外れの予知”を競うより、長期的なリスク評価と防災対策に力を入れる方が、社会にとってプラスが大きい」
という考え方が主流になっています。参考:USGS
2−5 日本は“世界一の観測大国”
もうひとつ知っておきたいのは、日本が「世界でもトップレベルの地震観測網を持つ国」だということです。気象庁や防災科学技術研究所、大学などが連携し、全国に密な地震観測網を張り巡らせています。参考:Agupubs
さらに、GPSや衛星を使った「地殻変動観測」も充実しており、プレートが年に数センチ動く様子まで追いかけることができます。これらのデータは、
- 地震の発生メカニズムを解明する基礎資料
- 地震ハザードマップ作成の材料
- 緊急地震速報や津波警報の迅速な発表
など、さまざまな形で活用されています。
観測網が充実しているからといって、すぐに「予知」ができるわけではありません。それでも、
「起きた地震をできるだけ漏れなく記録し、次の地震に備える」
という意味で、日本は世界の最前線を走っていると言ってよいでしょう。私たちがニュースで目にする「震度○」「マグニチュード○」という数字の裏には、こうした膨大な観測と研究の積み重ねがあるのです。
コラム 世界的権威・金森博雄さんが語る「地震と人間社会」
地震学の世界で「現代地震学をつくった一人」と言われる研究者が、日本生まれの地震学者・金森博雄(かなもり ひろお)さんです。東京大学で学んだあと、アメリカのカリフォルニア工科大学で長年研究を続け、地震の規模を表す「モーメントマグニチュード」の考え方を提案したことで知られています。参考:京都賞
従来のリヒター(M)だけでは、超巨大地震のエネルギーを正確に表せないという問題がありました。金森さんは、地震が起きたときの断層のズレ量や面積など「物理的なエネルギー」に基づいて規模を表す方法を整え、現在では世界中の地震カタログで標準的に使われています。また、遠く離れた地震波の形から、断層のどの部分がどれくらい滑ったかを推定する手法を開発し、「巨大地震の中身」を解剖する道を開いた人でもあります。参考:京都賞
さらに金森さんは、リアルタイム地震学や地震早期警報の分野にも大きく貢献しました。アメリカ西海岸で運用されている「ShakeAlert(シェイクアラート)」という地震早期警報システムでも、金森さんの発想をもとにしたアルゴリズムが活用されています。参考:Google Scholar
こうした功績が評価され、2007年には「現代地震学を築き、地震災害の軽減に多大な貢献をした」として京都賞(基礎科学部門)を受賞しました。参考:東京大学数理科学研究所
金森さん自身は、地震予知について非常に現実的な立場をとっています。地震の物理学はまだまだ複雑で、プレート境界の深いところで何が起きているのか完全には分かっていません。そのため、
「地震を完全に予知することは難しい。しかし、どの地域がどれくらい危ないのかを理解し、人々の備えやまちづくりに活かすことはできる」
という考え方を強調してきました。
また、統計地震学の分野では、尾形良彦さん(東京大学名誉教授)が地震の発生を数理モデルで表す研究で世界トップクラスの評価を受けています。特に、余震の発生を説明する「ETASモデル(流行性感染型余震系列)」は、世界中の地震予測・危険度評価で広く使われています。参考:USGS
アメリカでは、一般市民への分かりやすい情報発信で知られるルーシー・ジョーンズさんが「地震防災の顔」として活躍しており、「科学と社会をつなぐ」役割を果たしています。参考:Nature
こうした研究者たちの共通点は、
「できることと、できないことを冷静に見極めたうえで、現実的に役立つ防災につなげよう」
としている点です。私たちも、「予言めいた話」よりも、彼らのような専門家の冷静なメッセージに耳を傾けたいところです。
第3章 早期警報と「できること」と「できないこと」
ここからは、私たちの生活に直接関わる
- 緊急地震速報(早期警報)
- 地震後の余震予測
- 「デマ」とどう付き合うか
について見ていきましょう。
3−1 緊急地震速報のしくみと限界
日本の緊急地震速報は、世界でもトップクラスのシステムです。気象庁や防災科学技術研究所などが全国に多数の地震計を設置し、地震の最初の揺れ(P波)をキャッチして、
- 震源と規模をすばやく推定
- 強い揺れが予想される地域に一斉に警報を配信
する仕組みになっています。参考:Google Scholar
しかし、その性質上どうしても限界があります。
- 震源のすぐ近くでは、揺れが先に来てしまい、警報が間に合わない
- ごく小さな揺れを誤って大きく見積もると「空振り警報」になる
- 逆に、最初のデータだけでは実際より小さく見積もってしまうこともある
といった問題です。
海外の研究でも、
- 「震源の近くでは、強い揺れが来る前に十分な時間を確保することは難しい」
- 「どんなにシステムを改善しても、誤差や空振りをゼロにすることはできない」
といった“物理的限界”が指摘されています。
それでも、日本ではこのシステムのおかげで、
- 新幹線や在来線が自動的に緊急停止する
- 工場で危険な機械が止まる
- エレベーターが最寄り階に止まる
など、多くの「減災効果」が得られていることも事実です。
大切なのは、
「緊急地震速報は万能ではないが、“数秒〜十数秒の猶予”をどう活かすかで被害が変わる」
という現実を受け入れ、家庭や職場で「鳴ったらどう動くか」を具体的に決めておくことです。
3−2 余震予測と「これからしばらくは注意して」の意味
大きな地震が起きたあと、気象庁や専門家は必ずと言っていいほど、
「今後1週間程度は、同程度の地震に注意してください」
といったコメントを出します。これもある意味で「地震予測」の一種です。
これは、過去の地震データを統計的に分析すると、
- 本震のあとには、規模の小さい余震が多数発生する
- 余震の回数は時間とともに減っていくが、完全にゼロにはならない
- ごくまれに、本震と同じくらいの規模の地震が“だめ押し”のように起きる
といった傾向があるためです。参考:USGS
この「傾向」に基づいて、
「今回の地震の規模や場所から見て、今後これくらいの期間は注意が必要」
と判断し、私たちに注意喚起しているわけです。
もちろん、ここでも
- 具体的な日時までは分からない
- 「注意が必要」と言われているあいだに何も起きないことも多い
という限界はあります。しかし、
- 「しばらくは落下物に気をつける」
- 「危険な場所には近づかない」
- 「家の中の安全対策を急いで進める」
といった行動を取ることで、被害をさらに減らすことができます。
3−3 「○月○日に大地震」という“デマ”に振り回されないために
最近では、日本でも
- 「○月○日に南海トラフ大地震が起きる」
- 「この漫画家が“予言”した日がヤバい」
といった情報がSNSで拡散され、大きな不安を生んだことがありました。ある漫画作品が「大災害の予言」として取り上げられ、観光キャンセルが相次いだことも報道されています。参考:The Washington Post
実際には、気象庁長官が記者会見で
「科学的根拠はなく、予知はできない」
とはっきり否定しています。
こうした“予言”が出てくる背景には、
- 地震への不安や恐怖
- 「誰かが本当のことを知っているのでは」という期待
- 「当たったらすごい」という話題性
など、さまざまな心理が絡んでいます。
しかし、現時点で信頼できるのは、
- 気象庁
- 地震本部
- 大学や研究機関が出す公式情報
であり、「個人の予言」や「バズっているだけの動画」ではありません。
もしSNSで不安になるような情報を見かけたら、
- まずは気象庁や自治体の公式サイトを確認する
- 「日付や時間までピタリと書いてある予言」は疑ってかかる
- 不安だからこそ、落ち着いて備蓄や家具固定など“できる備え”に時間を使う
といった行動を心がけたいところです。
3−4 「予知」に頼らない、今日からできる5つの備え
最後に、「地震予知ができない世界」で私たちが今からできる、具体的な行動を5つだけ挙げておきます。
1.自宅と職場・学校のハザードマップを確認する
洪水だけでなく、地震・津波・土砂災害の危険度もチェックし、「どの方向に逃げるべきか」をイメージしておきましょう。
2.家具の固定と、寝室まわりの安全確保
大きなタンスや食器棚、本棚は必ず固定を。寝ているときに倒れてこない配置にするだけでも、命の危険は大きく下がります。
3.最低3日分、できれば1週間分の備蓄
水・食料・簡易トイレ・懐中電灯・モバイルバッテリーなど、「これがないと困る」というものを家族分そろえておきましょう。少しずつ買い足す「ローリングストック」がおすすめです。
4.家族で「連絡方法」と「集合場所」を決める
携帯がつながりにくい状況を想定し、「災害用伝言ダイヤルの使い方」や「互いに連絡を待つ場所(避難所など)」を共有しておきましょう。
5.緊急地震速報が鳴ったときの行動を決めておく
家の中、学校、職場、外出先、それぞれのパターンで「鳴ったらまず何をするか」を、紙に書き出して家族で共有しておくと安心です。
これらはどれも、「明日の予知」ができなくても、私たちの命を守ってくれる現実的な対策です。
おわりに 「予知」に頼るより、「備え」を日常に
ここまで見てきたように、
- 日時・場所・規模までピタリと当てる「地震予知」は、いまの科学では不可能
- 一方で、「どの地域がどれくらい危ないか」を評価する「長期予測」や、「数秒〜十数秒の猶予」を与える早期警報は、すでに実用化されている
- AIやビッグデータの活用で、地震の理解と長期予測の精度は少しずつ向上しているが、「占いのような予言」ができるわけではない
というのが、2020年代半ば時点での現実です。参考:USGS
世界的な地震学者たちも、
「地震そのものを完全にコントロールすることはできない。しかし、正しい情報にもとづいて備えれば、被害を大きく減らすことはできる」
という点では一致しています。日本政府の想定でも、南海トラフ巨大地震が起きた場合、何も備えをしていないケースと比べて、対策を徹底した場合では、死亡者数を大幅に減らせると試算されています。参考:The Japan Times
私たち一人ひとりができることは、派手な“地震予言”を追いかけることではなく、
といった、地味だけれど確実な準備です。
地震予知の研究は、これからも世界中で続いていきます。いつの日か、今よりずっと精度の高い予測ができるようになるかもしれません。しかしそれを待っているあいだにも、地震は今日・明日にも起きるかもしれません。
「予知ができないなら、備えてもムダ」ではなく、
「予知ができないからこそ、日常的な備えがいちばんの命綱」
と考えることが、地震大国・日本で生きる私たちにとって、いちばん現実的で、いちばん賢い生き方ではないでしょうか。
最後に、地震のニュースやSNSの“予言”を見て不安になったときは、深呼吸をして、身の回りの備えをひとつだけ見直してみてください。非常食を1つ買い足すでも、家具のネジを締め直すでもかまいません。小さな行動を積み重ねることこそが、「不安」を少しずつ「安心」に変えていく、いちばん確実な方法です。
この機会にぜひ、ご自宅や職場の防災を、もう一度見直してみてください。小さな一歩でも、積み重ねれば必ず“未来の自分と家族”を守る力になります。
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