飲み水・トイレ・生活用水…復旧までの“時間ごとの対処法”と、今日からできる備え方
地震が起きると、真っ先に気になるのが「水」です。
蛇口をひねっても一滴も出ない――そんな断水は、日本の大地震ではほぼ必ずと言っていいほど発生してきました。
ライフラインの中でも、水道は地中の配管が壊れるため復旧に時間がかかり、ときには数週間〜数か月に及ぶ例もあります。
一方で、私たちの日常生活は水なしでは成り立ちません。

飲み水、トイレ、手洗い、食事の支度、お風呂や洗濯――どれも大切ですが、災害直後は優先順位をつけて「限られた水をどう使うか」を冷静に判断することが命と健康を守るカギになります。
この記事では、「断水直後〜数時間」「1〜3日目」「長期化した場合」「復旧が近づいたとき」といった“時間の流れ”に沿って、具体的な対処法を整理しました。
さらに、途中で「コラム知識」を3つ挟み、備蓄量の目安やトイレ対策、給水車を上手に利用するコツなども紹介します。
読んだあとに「これなら、うちでもできそう」と感じてもらえるよう、できるだけ分かりやすく丁寧にまとめましたので、最後まで是非ご覧ください。
はじめに――なぜ地震のあとに断水が起こるのか?
大きな地震が起きると、水道管や浄水場・配水池などが揺れや地盤のずれで損傷し、水を安全に送れなくなることがあります。
水道管は地中に埋まっているため、どこが壊れているのか調査し、掘り起こして修理するのに時間がかかるのが特徴です。
令和6年能登半島地震でも、電気やガスより上下水道の復旧が大幅に遅れた地域がありました。
その一方で、国や日本水道協会は「1人1日3リットルの飲料水を最低3日分、できれば1週間分備蓄を」と呼びかけています。参考:日本水道協会
しかし、現実には「そんなに置く場所がない」「気づいたら賞味期限切れ」という声も多いのが実情です。
だからこそ、“事前にどれだけ備えておくか”と同じくらい、“断水してからどう動くか”がとても重要です。
次の章からは、断水のフェーズごとに、やるべきことを順番に見ていきましょう。
第1章 断水直後〜最初の数時間でやるべきこと

1-1. まずは「本当に断水か?」を確認する
- 近所の家やアパートで水が出るか聞く
- 自宅の止水栓・元栓が閉まっていないか確認
- 自治体や水道局の公式サイト・防災アプリ・Xなどで「断水情報」「給水のお知らせ」が出ていないか確認
マンションの場合は、ポンプの停電が原因で一時的に水が出ないだけというケースもあります。
電気が生きているか、管理組合からのお知らせもチェックしましょう。
1-2. 水道がまだ“わずかに出る”うちにしておきたいこと
完全に止まる前に少しでも出る状況なら、次のことを優先します。
※お風呂にためた水は飲料には使わず、トイレの流し水や掃除などの生活用水専用にしましょう。
1-3. 水の「優先順位」を家族で共有する
断水直後に大事なのは、「水の使い方ルール」を家族で決めておくことです。
「飲み水だけは絶対に切らさない」ことを合言葉に、しばらくは「髪は拭き取りで我慢」「洗濯は溜めてまとめ洗い」など、家族で合意しておくとトラブルが減ります。
◆コラム知識①:1人1日どれくらい水が必要?
国や自治体の資料では、「飲料水として1人1日3リットル」が目安とされています。参考:日本水道協会
さらに手洗い・簡単な洗浄など生活用水も含めると、1人あたり7.5〜15リットル程度が必要とされ、4人家族なら3日で約120リットルにもなります。
「そんなに備蓄できない…」という場合は、
- 飲料水:ペットボトルで優先的に備蓄
- 生活用水:風呂水の貯め置き、雨水の活用、給水所の水を大きなタンクやバケツで持ち帰る
…など、“飲み水はペットボトル+生活用水は工夫でカバー”というイメージで考えると現実的です。
第2章 1〜3日目を乗り切るための「水の管理術」
2-1. 給水車・給水ステーションをフル活用する

大規模な断水時には、自治体や水道局が給水車や「災害時給水ステーション」を設置するのが一般的です。
給水所の水は、基本的に飲料水として利用できますが、念のため自治体の案内に従い、必要に応じて煮沸するようにしましょう。
2-2.「使いまわし」と「拭き取り」で水を節約する
1つの行動で出した水は、可能な限り再利用します。
“蛇口を開けっぱなしにしない”だけでも、大きな節約効果があります。
2-3. 食事は「洗い物を減らすメニュー」に切り替える

「凝った料理は後回し」「お腹と心が満たされればOK」というつもりで、
“洗い物の少ない簡単メニュー” を意識しましょう。
◆コラム知識②:災害用トイレを「水対策」として考える
南海トラフ地震級の大災害では、断水によるトイレ問題が深刻化するため、政府は「平時からの災害用トイレ備蓄」を強く呼びかけています。参考:防災科学技術研究所
携帯トイレ(袋+凝固剤タイプ)を備えておけば、
も果たせます。水の節約という意味でも、「飲料水+非常用トイレ」のセット備蓄は、今や防災の“新しい常識”になりつつあります。
第3章 断水が長期化したときの暮らしと健康管理
3-1. 「衛生」と「メンタル」を守るための生活ルール
断水が1週間以上続くと、手洗い不足・入浴できないストレス・トイレの不快感が重なり、心身ともに疲れが出てきます。

こうすると、助かります。
「2〜3日入浴できないのは仕方ない。でも、最低限の清潔は保つ」という意識が大切ということですね。
3-2. 生活用水の“代替ソース”を探す
長期戦を見越して、次のような水源を検討します。
井戸水や沢水の利用については、必ず自治体の防災計画や案内で利用可否を確認しましょう。
3-3. 高齢者・乳幼児・持病のある人への配慮
水不足は、特に弱い立場の人たちに負担をかけます。
こまめな水分補給(経口補水液など)や、「我慢しないでトイレに行ける環境づくり」を意識しましょう。
◆コラム知識③:水道が復旧するのは「最後になりやすいライフライン」
大規模災害では、電気・通信・ガスなどと比べて、水道の復旧が最も遅れることが多いと言われます。上下水道は地中に埋設されているため、
- 損傷箇所の特定
- 掘削・修繕工事
- 漏水がないかの確認
…といった作業に時間がかかるからです。
そのため、被災地では「“1週間以上の断水”を前提にした備え」が推奨されるケースもあります。
飲料水や簡易トイレなど、“1週間生活”をイメージした備蓄にシフトしていくことが、これからの時代の現実的な防災と言えます。
第4章 断水が復旧するときの注意ポイント

4-1. 「水が出た!」その前に必ず確認したいこと
水道局から「断水が復旧しました」と発表があっても、すぐにゴクゴク飲むのはNGです。参考:東京水道局
- まずは蛇口を少し開け、濁り水や空気をゆっくり排出
- バケツにためて、色・匂い・濁りを確認
- 自治体から「念のため煮沸してください」と案内があれば、その指示に従う
4-2. トイレや給湯器の配管トラブルに注意
国のトイレガイドラインでも、停電・断水・排水管の破損などを確認してから水洗トイレを使うよう注意喚起されています。参考:国土交通省
4-3. 「断水経験」を次の備えにつなげる
復旧後は、ぜひ家族で振り返りを。
これをメモしておき、次の買い物や防災グッズの見直しに反映させることで、「経験」が確実な防災力に変わります。
おわりに――“完璧な備え”より“動ける備え”を
断水は、私たちの生活の脆さを一気にあらわにします。
「水さえ出れば何とかなる」と思っていたことが、一瞬で崩れてしまうからです。
しかし、この記事で紹介したように、
を頭の片隅に入れておくだけでも、いざというときの行動は大きく変わります。
大切なのは、「完璧な備えを目指して何もしない」のではなく、「できるところから少しずつ」「断水しても慌てずに動ける自分になる」こと。
この記事が、あなたのご家庭の「水の防災力」を一段引き上げるきっかけになれば幸いです。
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