はじめに
災害が発生すると、地震・土砂崩れ・洪水などが原因で道路・インフラに甚大なダメージが起こります。特に地中を走る水道管がひずみを受けたり破断したりすることで、水道の供給が一気に止まる断水が発生します。実際、東京都を例に取ると、首都直下地震クラスの揺れが起きれば、断水率が20〜25%を超える可能性があるとの想定も出ています。
さらに、老朽化した配管、地下地すべり、液状化や地盤変動などの地盤不安定化も断水リスクを増やします。たとえば浄水場や送水ポンプ設備が被災すれば、断水が地域全体に広がるケースもあります。上下水道を一体的に耐震強化する計画も国土交通省が示しています。
また、過去の地震や豪雨の際、断水が長期化した地域では被災者の生活に著しいストレスがかかりました。断水の発生は決して「ちょっと水が出ない」レベルではなく、飲用・衛生・トイレ・調理・掃除など、日常のあらゆる水利用が制限される重大なインパクトを伴います。
こうした背景を踏まえ、断水は“災害時のほぼ定番課題”と見なしておくべきです。本章では、断水がなぜ発生しやすいかを理解することで、「起きてから慌てる」ではなく「起きる前に備える」思考を持つことが第一歩になります。
💬 ここからが本題です。
断水は“災害時の当たり前”になりつつありますが、正しい知識と備えがあれば、私たちはその被害を最小限にできます。
では次に、「いざ断水が起きたとき、どのように行動すればいいのか」を一緒に学んでいきましょう。
これからの章では、災害直後から復旧までの行動ステップを、実例とともに分かりやすく解説していきます。
第1章 🔶 まず落ち着く──パニックを防ぐ「最初の10分」

「蛇口をひねっても、水が出ない…!」
災害直後、多くの人がこの瞬間に混乱します。しかし、最初の10分こそ冷静さが命を守ります。
まずやるべきは「確認」と「遮断」。
1️⃣ 近所やSNSで同様の断水が起きていないか確認。
2️⃣ 家中の蛇口を閉め、給水元栓を止める。
これは、急な水圧変動で管に泥水や空気が逆流するのを防ぐためです。
(参考:SECOM安心ナビ「断水への備え」
👉 https://www.secom.co.jp/anshinnavi/bosai_boka/backnumber396.html)
💬 落ち着いて行動できた人ほど、結果的に被害が少なかった──これは多くの被災記録が示す共通点。
“まずは冷静に全体を見渡す”こと、それが家族を守る第一歩です。
断水発生前にできる準備 ― “備え”としての水・器具・情報
断水は予告なく起きることが多いため、「前もって備えておく」ことが非常に重要です。
では、具体的に何を、どのくらい準備すればいいのでしょうか?
🔶 飲料水と生活用水のストック
- 飲料水の備蓄:1人1日あたり3リットルが目安とされ、まずは3日〜1週間分を目標にすると安心です。
- 蓋つきポリタンクやペットボトル:清潔な容器で水を汲み置きしておけば、断水直後の水分確保になります。自治体や上下水道事業団体では、災害時給水所に水を入れる容器を持参するよう案内されています。
- 長期保存型水(ミネラルウォーター、保存水):5年〜10年保存可能なタイプがあります。定期的に回転させて入れ替えることが重要です。
- 風呂の残り湯:断水前に使い切らず、残しておけば洗い場用やトイレ用などに活用できます。ただし飲用には適しません。
🔧 必要な器具・グッズ
- 携帯トイレ・簡易トイレ:断水でトイレが使えなくなるリスクを前提に、備えておきたい必需品。
- 衛生用品:ウェットティッシュ、使い捨てタオル、体ふきシート、ドライシャンプーなど。水を使わずに清潔を保つ工夫として有効です。
- 給水袋や給水用ホース、飲料水ホース:被災したときに雨水を取り込んだり、川水を濾過して使う予備手段として使えることがあります(ただし水質の確認や消毒処理が必要)。
- ラップ、耐熱ポリ袋、紙皿/紙コップ:調理や食器洗いの水使用を抑えるため、食器にラップを敷いてその上に盛り付ける方法が知られています。
- 情報手段:地域の上下水道の防災ページ、断水時給水ステーションのマップ、自治体の緊急連絡先を事前に確認しておきましょう。例えば、東京都水道局は災害時に通水状況を地図表示で案内しています。
📌 備えにおける心構え・管理
備蓄した水やグッズは定期点検を。水は時間経過で風味や成分が変化するため、保存期限を守って入れ替えましょう。非常持出袋や防災用グッズに含めておくことで、持ち出しも対応できます。
また、自治体が指定する給水拠点(災害時給水ステーション)の場所と開設時間も平時から確認しておきましょう。断水中の水入手の最優先ルートになります。
以上が“断水前にできる準備”。これをやっておけば、断水発生直後からパニックに陥る可能性を大きく減らせます。
第2章 💧 水を確保せよ──「今ある水」を守り、「次の水」を探す
断水で最初に困るのは、何よりも「飲み水」。
しかも復旧には数時間~数日かかることもあります。
ここで大切なのが、“今ある水を守る”+“これから得る水を確保する”という二段構えです。
🔹 家に残る水を守る
🔹 給水所・支援拠点の確認
各自治体の「災害時給水ステーション」を確認。
東京都水道局では災害時の通水マップが公開されています。
👉 https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/shinsai/tsusui
給水所では容器持参が原則。
ポリタンク・給水袋(10L~20L)を日頃から用意しておきましょう。
そして、水が再び出るまでの期間を想定して、
「1人1日3リットル×3日=9リットル」を最低ラインに備えるのが防災基本です。
断水期間中の暮らし方 ― 水を効率よく使う技・工夫
断水が継続する期間、被災者は“水を最小限に使って最大限に活かす”生活をする必要があります。
では、断水期間中に日々使える技・工夫とはどんなものがあるのでしょうか?
💧 飲用・調理まわりの工夫
🚿 衛生管理・体のケア
- 体ふきシート・ノンウォーターペーパータオル:これらを活用して汗や汚れを拭き取る。
- ドライシャンプー:水を使わずに頭皮の清潔を保つ手段。
- 手洗いには消毒液やアルコール除菌液を併用:水が貴重なときは消毒液で代替。
- うがい/歯磨きは少量水または濃度を薄くした消毒液で代用
🚽 トイレ・排泄対応の工夫
- 携帯トイレ・簡易トイレの定期替え:使用後は密閉して処理できるように。
- 凝固剤付き袋:排泄物を固めて処理しやすくする。
- 新聞紙・紙袋・ビニール袋併用技術:吸水性のある紙類と密閉袋を併用して汚物を包む。
- マンホールトイレ等公共トイレの利用:自治体が設置している仮設トイレ機能を調べ、活用する。
📦 物資のやりくり・節水意識の維持
断水期間中は日を追うごとに不安も高まります。物資を公平に、計画的に使うことが重要です。
また、飲料水を最も優先しつつ、残りの利用は「1滴がもったいない」意識で使います。
家族や近隣と水の使い道を調整・共有し合うことで、無駄を防げます。
✔️ 補足:井戸・湧水活用の可能性
自治体によっては、災害用井戸・湧水を“災害時用給水源”として登録している地域もあります。国のガイドラインにも、災害時に井戸や湧水を活用できるよう登録制度を設ける例が示されています。
もし自宅や近隣に井戸を持っているなら、平時から登録可否や利用方法を確認しておくと心強い選択肢になります。
断水期の暮らしは“制約との付き合い”とも言えますが、知恵と連携次第で被害を最小限に抑えることが可能です。
第3章 ⚠️ トイレと衛生──「流さない勇気」と「清潔を保つ知恵」
断水で最もストレスが大きいのは、トイレと衛生。
水が出ないとトイレが使えず、感染症リスクが一気に高まります。
ここで必要なのは、「流さない勇気」と「清潔を保つ知恵」です。
🚽 トイレの対策
(参考:国土交通省「災害時トイレ対策」
👉 https://aquarepure.com/toilet_during_disaster/)
🧴 清潔を保つ工夫
参考リンク:
👉 https://www.yokohamashimin-kyosai.or.jp/useful/2024/05/water-outage-countermeasures.php
断水中の“衛生維持”は、命を守るもう一つの戦いです。
断水解除後から復旧まで・復旧後の注意点と教訓
断水が解消されれば「終わり」ではありません。復旧時・その後の対応で、さらに被害を抑えることができます。本章では、断水解除直後から完全復旧までの注意ポイントとは何でしょう?
① 断水解除直後の注意点と復旧の手順
- すべての蛇口を閉め、元栓のみを少しずつ開ける:いきなり全面開放すると、水圧変動で管に負荷がかかるため、ゆっくり開けることが推奨されます。
- キッチン・洗面所等、比較的安全な蛇口を優先して少しずつ流す:最初は泥や異物混入の可能性があるため、濁った水が出ることを想定して少しずつ流します。
- トイレ・給湯機器は最後に開放:最初に開けると逆流や装置トラブルを招く可能性があるため、最後にゆるやかに開けるのがセオリーです。
- 配管・機器の点検:水漏れ、パイプ破損、設備異音などに注意し、異常があれば給水を止めて専門業者に相談。
このような手順に従うことで、断水解除と同時に二次被害を防ぎながら段階的に復旧できます。
② 復旧期間中・長期的な対応
③ 復旧後の“振り返り”と次への備え
断水という非常事態を経験したあとは、必ず「振り返り」と「教訓化」を行いましょう。
具体的には:
こうした振り返りにより、次回以降の断水対応力が格段に上がります。
第4章 🚿 節水の極意──「1滴も無駄にしない」生活の知恵
断水が続くと、日常動作のすべてが“水の消費行為”になります。
だからこそ、「どう使わずに済ませるか」がポイント。
🔹 生活での節水術
- 調理は耐熱ポリ袋調理法で。袋ごと湯せんし、鍋を汚さない。
- 食器洗い→ラップ活用、洗濯→濡れタオルで拭く。
- 歯磨き→ペットボトルキャップ1杯程度の水+ウェットティッシュ。
(参考:Premium Water 防災コラム
👉 https://premium-water.co.jp/news/20240307-2311/)
🔹 小技のアイデア
- ペットボトルのキャップに穴を開けて“簡易蛇口”に。
- 水を2度使う(手洗い水→トイレ洗浄など)。
- 野菜洗い水→観葉植物や打ち水に再利用。
💬 小さな節水が、3日目・4日目の生存をつなぐ。
「使わない工夫」こそが究極の断水対策です。
第5章 🏠 復旧までの道──「元に戻す」と「次に備える」
待ちに待った通水復旧。
しかし、「水が出た!」と同時に注意すべきことがたくさんあります。
💧 復旧直後にやること
1️⃣ 元栓をゆっくり開ける。
2️⃣ 最初に少量の水を流して、濁り・異臭を確認。
3️⃣ 給湯器や洗濯機は最後に接続。
👉 https://www.secom.co.jp/anshinnavi/bosai_boka/backnumber396.html
📋 復旧後のチェック
- 水漏れ・異音・配管のゆるみを確認。
- 使い切った備蓄水・非常用品を補充。
- 断水対応の記録をノートに残し、次への備えに。
💬 終わった後こそ「防災が育つ時間」。
経験を次の備えにつなげることが、最大の学びです。
🔚 おわりに──「行動できる人」が生き残る
断水は、災害時にほぼ必ず起きる“生活停止の危機”。
でも、あなたがこの記事を読んだ今から始めれば、
その瞬間に “家族を守れる人” になれます。
🌸 「水が出ない!」そのときに焦らず動くために──
今日、ペットボトルを1本多く買って、
非常用の給水袋を1つ備えてください。
それが、未来のあなたと家族の命を守る最初の一滴になります。
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