はじめに
日本は、地震・台風・津波・豪雨など、あらゆる自然災害と共に生きてきた国です。
その中で「防災」は、自治体の努力と住民の意識が一体となってはじめて機能するもの。
しかし、全国を見渡すと、その熱意と仕組みには大きな差があります。
では、今、日本で最も防災に関心を持ち、実際に行動している自治体はどこなのでしょうか？
専門機関の調査や各自治体の政策を比較すると、長年にわたり“防災の手本”とされているのが、
なんと、 静岡県 なのです。
この県は、地震や津波といった高いリスクを抱えながらも、「恐れるのではなく、備える文化」を築いてきました。
今回は、静岡県を中心に、東京都や神戸市など、全国の防災先進自治体の姿を上品に、そしてわかりやすく紹介します。
1️⃣ 自らを「日本一の防災先進県」と宣言
静岡県は、県の基本計画「ふじのくにづくり計画」の中で、次のように明記しています。
『日本一の防災先進県を目指す』
この一文は、行政としての覚悟の表れです。
計画の中では、「県民一人ひとりが命を守る力を持つ社会」を目標に掲げ、
住宅の耐震化、津波避難施設の整備、防災教育、そして地域の訓練支援などを包括的に実施しています。
このように、県が“宣言”をするだけでなく、予算・人材・教育を含めて体系的に動いていることが、静岡県の大きな特徴です。
2️⃣ 半世紀にわたる「東海地震対策」
静岡県が防災を最重要課題としてきた背景には、1970年代に提唱された「東海地震説」があります。
地震の巣といわれる駿河湾を抱える県として、静岡は他に先駆けて「地震と共に生きる県づくり」を始めました。
- 1976年には「地震防災対策強化地域」に指定
- 木造住宅の耐震補強助成を全国初で実施
- 学校・公共施設の耐震化を県主導で推進
- 家具転倒防止や安否確認訓練を県民運動化
さらに、企業・病院・学校を巻き込んだ「静岡方式」と呼ばれる危機管理体制を整備し、
行政と住民が同じ訓練に参加する文化を根づかせてきました。
他の県が「想定外」に備えるのに対し、静岡は「必ず起きる前提」で準備する。
この長期的な姿勢こそ、防災における全国のモデルとなっているのです。
3️⃣ 子どもから学ぶ「静岡流・防災教育」
防災の本質は、“知識より行動”です。
静岡県では、その行動力を子どものうちから育てています。
県内の小中学校では、避難訓練だけでなく、
「自分で考え、判断し、動く」ことを目的とした防災授業が行われています。
授業では、子どもたちがグループごとに「家族の避難ルート」や「ペットを連れて逃げる方法」を話し合います。
その成果は「防災ノート」として家庭にも持ち帰られ、家族で共有される仕組みです。
こうした教育は、地震調査研究推進本部（政府機関）からも「全国に先駆けた防災教育」として高く評価されています。
📎 地震調査研究推進本部コラム
このように、静岡県では“防災を学校で学ぶ”のではなく、“防災を家庭で語り継ぐ”文化が根付いているのです。
4️⃣ 情報を一元化した「防災ポータルサイト」
静岡県は、誰でもアクセスできる「防災ポータルサイト」を設け、県民の命を守るための情報を一か所に集約しています。
ここでは、
- 発令中の避難情報
- 避難所の開設状況
- 津波・火山・雨量情報
- 各地のハザードマップ
- 防災アプリの案内
などがリアルタイムで更新され、スマートフォンからでも見やすい設計になっています。
加えて、県の公式X（旧Twitter）アカウントでも最新情報を発信し、SNSを使った即時周知が行われています。
デジタルと現場の両面から支える姿勢は、まさに“現代型防災”の象徴です。
5️⃣ 住民の意識と地域の絆
静岡県の防災力を支えるのは、行政だけではありません。
実際には、住民の意識と地域の絆 が大きな役割を果たしています。
県内にはおよそ5,100の自主防災組織があり、
「共助（きょうじょ）」の精神が地域の中にしっかり根づいています。
たとえば、避難訓練では子どもが高齢者の手を引き、
地域放送で安否確認を行い、
炊き出し訓練では学校や自治会が連携します。
野村総合研究所の調査でも、静岡市・浜松市は「防災行政への信頼度」「市民意識の高さ」で全国上位に位置しています。
行政の努力と県民の協力が噛み合ってこそ、
静岡の「防災文化」は支えられているのです。
6️⃣ 他の防災先進都市にも広がる“静岡モデル”
静岡県の成功は、他の自治体にも影響を与えています。
東京都 では、首都直下地震に備えて「東京マイ・タイムライン」を導入し、
個人が「災害前・発生時・避難後」に何をすべきかを自分で作成できるようになりました。
📎 東京都防災ホームページ
神戸市 では、阪神・淡路大震災の経験を生かし、「リアルタイム防災情報サイト」を構築。
現在の避難所開設状況や交通情報、ライフラインの復旧状況を住民が確認できる体制を整えています。
📎 神戸市防災情報
こうして静岡県が築いてきた「防災と共に生きる社会」の考え方が、少しずつ全国へ広がっているのです。
おわりに
防災という言葉は、時に「難しい」「専門的」と感じられるかもしれません。
けれど、静岡県の取り組みを見ると、それは決して特別なことではなく、
“日常を丁寧に生きる”ことの延長線上にあると気づかされます。
家の安全を確かめること、家族と避難先を話し合うこと、
地域の訓練に一度だけでも顔を出してみること――。
それが、静岡県が半世紀かけて実現してきた「当たり前の防災」なのです。
防災とは、“恐れ”ではなく“思いやり”。
静岡県の歩みは、そのことを静かに教えてくれます。
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