ベビーカー or 抱っこ紐、災害時に正しいのはどっち?

防災グッズ
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はじめに

「もし地震が来たら、子どもを連れてどうやって逃げればいいのだろう?」

防災記事を書いていると、子育て中の読者の方から、こんな質問を本当によくいただきます。

その中でも特に多いのが、「ベビーカーと抱っこ紐(おんぶ紐)、災害時に正しいのはどっちですか?」という問いです。

普段の生活では、ベビーカーは荷物も積めてとても便利です。一方で抱っこ紐は、両手があき、階段や狭い通路でも動きやすいというメリットがあります。ところが、「災害時」という非日常になると、この二つの道具は、まったく違う表情を見せます。

地震のあとの道路は、アスファルトが割れて段差だらけになっているかもしれません。瓦礫やガラス片が散乱していることもあります。人が一斉に避難を始めれば、通路は人混みであふれ、押し合いへし合いになる可能性もあります。そんな中でベビーカーを押すことが、本当に安全と言えるのか――これは一度、冷静に考えなければならないテーマです。

実際に、東日本大震災を経験した防災の専門家や助産師は、「子連れ避難には抱っこ紐・おんぶ紐を用意しておくべき」と繰り返し発信しています。赤ちゃんと身体が密着していることで、親がとっさに守りやすく、リュックで荷物を背負えば両手も自由になるからです。

一方で、「うちは荷物が多すぎて、抱っこ紐だけでは現実的じゃない」「ベビーカーじゃないとすぐ泣いてしまう」という声があるのも事実です。災害時には、きれいごとだけではなく、その家庭のリアルな事情も考えに入れないと、机上の空論になってしまいます。

そこで本記事では、

  • 過去の事故・事例や専門家の意見
  • ベビーカー・抱っこ紐それぞれのメリット・デメリット
  • 実際の避難を想定した「現実的な組み合わせ方」
  • 防災目線で選びたい具体的なおすすめアイテム

をまとめて、「災害時に本当に役立つ選択」を一緒に考えていきます。

結論を先に言うと、
「どちらか一方が絶対正しい」のではなく、状況と使い分けが鍵です。
そのうえで、「初動はまず抱っこ紐(できればおんぶ)」「状況が落ち着いてから軽量ベビーカー」という流れが、多くの専門家や現場経験者のあいだで支持されている考え方です。

なぜそう言えるのか、じっくり見ていきましょう。


第1章 災害時にベビーカーはなぜ危険視されるのか

まず「ベビーカー側」の話から整理していきます。

普段は大活躍のベビーカーが、なぜ災害時には危険だと言われるのか。その理由を具体的な事故例や環境の変化から見ていきます。

ベビーカーは一見、赤ちゃんを座らせてスムーズに移動できる便利な道具です。しかし、災害環境では前提がまったく変わります。

1-1 路面環境が「ベビーカー殺し」に変わる

地震や豪雨、土砂災害が起きたあとの道路は、段差・ひび割れ・陥没・瓦礫などでデコボコになります。通常の歩道のちょっとした段差でさえ、ベビーカーは「ガツッ」と引っかかることがありますよね。災害時にはそのレベルが何倍にもなります。

消費者庁や各種事故データベースには、
「ベビーカーに子どもを乗せたまま段差を乗り越えようとしたら、前輪が引っかかって転倒し、子どもが負傷した」という事例が複数報告されています。

普段の公園の段差でさえ転倒事故が起きているのですから、瓦礫や亀裂だらけの路面で、安全にベビーカーを押し続けることは非常に難易度が高いと言えます。

1-2 群衆の圧力と転倒リスク

もうひとつの大きな危険は、「人の波」です。避難所に向かう人が一度に押し寄せると、通路や階段は人で埋まります。その中でベビーカーを押していると、

  • 後ろから押されてコントロールを失う
  • 横からぶつかられてベビーカーが傾く
  • 階段でバランスを崩して転倒する

といったリスクが急激に高まります。
実際に、ショッピングモールなど平時の環境でも、「ベビーカーを押していて床の微妙な段差につまずき、転倒しそうになった」という事故事例が報告されています。

これが災害時の混乱した環境なら、事故の深刻度はさらに増すことは想像に難くありません。

1-3 ベビーカーのメリットも無視はできない

とはいえ、ベビーカーにも防災上のメリットは確かにあります。

  • 荷物を積める(オムツ・ミルク・着替え・水など)
  • 子どもが乗り慣れていれば安心して座ってくれる
  • 親の腕や腰の負担を減らせる

特に乳幼児連れは荷物が非常に多くなりがちで、「全部をリュックだけで持つのは現実的ではない」という家庭は多いでしょう。ベビーカーは「動くカート」として優秀であり、状況が落ち着いたあとの移動手段としては、むしろ強い味方になりえます。

つまり、ベビーカーは「絶対にダメなもの」ではなく、
“初動の混乱した場面には不向きだが、二次的な移動や荷物運搬には役立つ”という性質を持っているのです。


第2章 抱っこ紐・おんぶ紐が災害時に強い理由

続いて、抱っこ紐・おんぶ紐の側から見ていきます。

専門家や防災教育に携わる人たちの多くが、「子連れ避難は抱っこ紐・おんぶ紐を準備しておくべき」と語るのには、はっきりとした理由があります。

2-1 両手が自由=命を守るための「余白」

災害時の避難では、「両手が空いているかどうか」が安全性を大きく左右します。

  • 手すりをつかんで階段を降りる
  • 壁を伝いながら歩く
  • 転びそうになった人を支える
  • 自分が転びそうになったとき、とっさに踏ん張る

こうした動作は、片手や両手がふさがっていると、とたんに難しくなります。

抱っこ紐・おんぶ紐で赤ちゃんを身体に固定しておけば、両手を「自由に使える状態」で避難行動がとれるため、転倒・落下などのリスクを減らすことができます。

防災教育に携わる専門家も、「抱っこでもおんぶでもよいが、必ず道具を使い、身体としっかり固定して両手を空けることが大事」と強調しています。

2-2 足元の見やすさとバランス

おんぶの場合、子どもが背中側に来るため、前方の視界と足元が見えやすくなります。避難時は瓦礫や段差、ぬかるみなど「足元の危険」が増えるため、視界の確保は非常に重要です。

助産師や防災士の中には「避難時は抱っこよりもおんぶの方が理にかなっている」と指摘する人もいますが、一方で「ふだんおんぶに慣れていない親子が、いきなりおんぶするとバランスを崩す危険もある」との指摘もあり、平常時から慣れておくことが前提と言えます。

2-3 抱っこ紐にも弱点はある

とはいえ、抱っこ紐・おんぶ紐も万能ではありません。

  • 長時間になると肩・腰への負担が大きい
  • 夏場は密着による暑さ・熱中症リスクがある
  • 荷物をあまり持てない(リュック必須)

特に猛暑の中での避難では、親子ともに体温が上がりやすく、水分補給や休憩のタイミングが重要になります。「抱っこ紐+リュック+帽子・冷却グッズ」の組み合わせで、体への負担を意識的に減らすことが必要です。


第3章 結論:初動は抱っこ紐、その後に軽量ベビーカーが現実的

ここまで見てくると、ベビーカーと抱っこ紐のそれぞれに、メリットとデメリットがあることが分かります。そのうえで、防災の専門家や育児経験者の意見を踏まえると、もっとも現実的な答えは次のようになります。

災害直後の「初動避難」は抱っこ紐(できれば慣れたおんぶ)。
道路状況が落ち着いてからの移動や生活では、軽量ベビーカーを併用する。


3-1 初動は「迷わず抱っこ紐」

地震直後や津波警報発表直後など、もっとも危険度が高い時間帯には、路面状況も人の動きも読めません。ここでは、ベビーカーの利点よりも、

  • すばやく動けること
  • 転ばないこと
  • 子どもが親の身体にしっかり固定されていること

が最優先です。

そのため、
「とにかく最初の避難は抱っこ紐(またはおんぶ紐)で」
という方針が、専門家・経験者ともに強く支持されています。

3-2 避難先や二次移動で軽量ベビーカーが活きる

一方で、避難所や友人宅・親類宅など、ある程度安全が確保された場所に移動したあとや、数日間の生活が続く中では、ベビーカーのメリットが効いてきます。

  • 仮設住宅や避難所の周りのちょっとした移動
  • 買い出しや役所への手続きに出向くとき
  • 赤ちゃんを寝かせる簡易ベッド代わりとして

こうした場面では、軽くて折りたたみやすいベビーカーがあると、親の体力消耗を大きく減らすことができます。


防災目線でのベビーカー&抱っこ紐 比較表

ベビーカー抱っこ紐・おんぶ紐
初動の避難×:段差・瓦礫・群衆に弱い◎:両手が空き、素早く動ける
荷物の運搬◎:たくさん積める△:リュック併用が必要
階段・狭い通路×:持ち上げる必要あり○:そのまま通れる
転倒時のリスク子どもごと転倒の可能性親が踏ん張れば守りやすい
長時間の親の負担腕・腰は比較的ラク肩・腰の負担が大きくなる場合あり
避難生活中の使いやすさ○:移動・簡易ベッドに便利○:乳児の安心・寝かしつけに有効

防災向きの具体的おすすめアイテム

以下は、防災目線で選びたい代表的なアイテムです。
それぞれ商品名をそのまま記載しているので、詳しい仕様や最新価格は商品カード(リンク)から確認できます。


イメージはこんな感じです。




※上記のように、

  • 抱っこ紐は「通気性」「フィット感」「装着のしやすさ」
  • ベビーカーは「軽さ」「折りたたみやすさ」「段差への強さ」
  • 防災リュックは「背負いやすさ」「家族構成に合った中身」

を基準に選ぶのがおすすめです。


FAQ:よくある質問

Q1. 新生児でも抱っこ紐で避難して大丈夫?
A. 新生児対応の抱っこ紐であれば可能です。ただし、縦抱きに対応しているか、首すわり前に対応したインサートが必要かなど、メーカーの使用条件を必ず確認してください。はじめて使う場合は、平常時から自宅で練習し、「装着に迷わない状態」を作っておきましょう。

Q2. 双子の場合はどうすべき?
A. 双子用ベビーカーでの避難は、段差や人混みを考えるとリスクが高くなります。現実的には、

  • 親+もう一人の大人でそれぞれ抱っこ紐(おんぶ紐)
  • もしくは、片方を抱っこ紐、片方を軽量ベビーカーで、状況に応じて切り替え
    といった「複数大人+複数ツール」の組み合わせが望ましいです。

Q3. うちの子はベビーカーじゃないと泣きます…。どうしたら?
A. 日頃から少しずつ「抱っこ紐・おんぶ紐に慣れる練習」をしておくのが大切です。いきなり本番で切り替えるのではなく、短時間のお散歩や家の中での抱っこからスタートし、「抱っこ紐=安心できる時間」というイメージを作っておくと、いざというときの抵抗が減ります。


まとめ

「ベビーカー or 抱っこ紐、災害時に正しいのはどっち?」という問いは、一見シンプルな二択のように見えます。しかし、ここまで見てきたように、その答えは「どちらか一方が正解」というものではありません。

地震直後や津波からの避難など、時間との勝負・一歩の判断が命を分ける場面では、路面は荒れ、人の流れも読めません。そこに四輪で動くベビーカーを持ち込むのは、転倒リスク・群衆の圧力・段差での引っかかりなど、多くの危険を抱えることになります。

一方、抱っこ紐やおんぶ紐は、赤ちゃんを親の身体にしっかり固定しながら、両手を自由に使えるという大きな強みがあります。足元の安全を確認しながら素早く動き、何かあったときに踏ん張れる余地を残せる。それは、非常時にこそ価値を発揮する「余白」だと言えます。

だからこそ、初動の避難は迷わず抱っこ紐・おんぶ紐
これは多くの専門家や経験者が口をそろえて伝えている「命を守るための原則」です。

しかし、災害は「その瞬間」で終わりません。避難所での生活、別の場所への二次避難、数日〜数週間にわたる不安定な暮らしが続くこともあります。その段階では、荷物の多い子育て家庭にとって、ベビーカーはやはり頼れる存在になります。子どもを寝かせるベッド代わりにもなり、親の腕や腰の負担も軽くしてくれるでしょう。

つまり、防災という観点から導かれる現実的な結論は、

  • 「初動は抱っこ紐・おんぶ紐で逃げる」
  • 「安全が確認されたら、軽量ベビーカーを上手に使う」

という時間軸に沿った“使い分け”です。

準備の段階では、

  • 通気性とフィット感のよい抱っこ紐
  • 軽くて折りたたみやすいベビーカー
  • 親の両手と背中をうまく使える防災リュック

をセットで考えておくことが、親子の命を守るうえで非常に心強い備えになります。

そして何より大切なのは、「道具を買って終わり」にしないことです。
平常時から、

  • 抱っこ紐を素早く装着する練習をしておく
  • おんぶ姿勢にも少しずつ慣れておく
  • ベビーカーでどのくらいの段差までなら safely 超えられるか試しておく
  • 家族で「地震が来たらどのルートで逃げるか」を話し合っておく

といった、小さな準備の積み重ねが、いざというときに本当の力を発揮します。

「ベビーカーか、抱っこ紐か」という迷いは、言い換えれば、家族を守りたいという真剣な気持ちの表れでもあります。この迷いにきちんと向き合い、自分たちの生活スタイルや住んでいる地域のリスクを踏まえたうえで、最適な組み合わせを考えてみてください。

あなたのご家庭の防災計画を一歩前に進めるきっかけになれば幸いです。

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